会員TOPICS エバタ【フランス鉱物油規制について】

フランス鉱物油規制について

株式会社エバタでございます。日頃よりお取引いただいている皆様に感謝申し上げます。

さて、弊社では主にオフセット印刷用インキを取り扱っておりますが、最近、インキを納めさせていただいている印刷会社様からお問い合わせをいただくようになったのが、「フランス鉱物油規制」に関するものです。このフランス鉱物油規制の概要について、簡単にではありますが以下にまとめました。ご覧の皆様のお役に立てれば幸いです。

なお、弊社は本記事の情報の正確性を保証致しません。本記事の情報に基づいて行った行為により生じたいかなる結果に関しても、弊社は責任を負いかねますのでご了承ください。

目次

正式名称

フランス鉱物油規制と呼んでいるのは、正式には、フランス政府のエコロジー移行省の省令「包装および公衆への印刷での使用が禁止されている鉱油に含まれる物質を指定する2022年4月13日の命令」のことで、2022年5月3日のフランス共和国官報(JORF)で公布されました(リンク先はフランス語のページですが、Webブラウザの翻訳機能を使用することで雰囲気を掴むことができます)。

我々が知る必要はあまりありませんが、この省令の根拠となっているのが、「フランス環境法典」のいくつかの条文です。これらの条文は、規制を強化するために、2020年に修正されています。この修正を行うのが「循環経済法」、記事によっては「廃棄物と循環経済との闘いに関する法律」と訳されていますが、この法律の第112条になります。さらに根拠を遡ると、EUの勧告に行き当たるようです。

規制の内容

フランス鉱物油規制はフランス国内において、2023年より包装材や印刷物への鉱物油の使用を禁止する規制です。背景にあるのは、鉱物油の人間の健康への影響と、鉱物油がリサイクルに適さないことによる環境への影響です。この規制では、鉱物油を「インキ製造に使用される石油系炭化水素を原料とする油脂」と定義していますので、インキを扱っている我々としては、無視できません。実際に一部のインキ製品の安全データシート(SDS)を見ると、「鉱油」の名称で含有されていることが確認できます。

この規制では、規制の対象製品、対象物質及びその濃度について、2023年から適用される規定とともに、より規制を拡大した2025年から適用される規定が、段階的に定められています。規制の具体的な内容は以下の通りです。

施行日2023年1月1日より
対象製品包装材
商業用宣伝のための未承諾広告チラシ(ダイレクトメール)及びカタログ
対象物質質量濃度でMOAHが1%を超えるインキの使用を禁止
施行日2025年1月1日より
対象製品一般向け印刷
対象物質質量濃度でMOAHが0.1%を超えるインキの使用を禁止
質量濃度でMOSHが0.1%を超えるインキの使用を禁止
質量濃度で3~7個の芳香環を持つMOAHが1ppmを超えるインキの使用を禁止
施行日
2023年1月1日より
対象製品
包装材
商業用宣伝のための未承諾広告チラシ(ダイレクトメール)及びカタログ
対象物質
質量濃度でMOAHが1%を超えるインキの使用を禁止
施行日
2025年1月1日より
対象製品
一般向け印刷
対象物質
質量濃度でMOAHが0.1%を超えるインキの使用を禁止
質量濃度でMOSHが0.1%を超えるインキの使用を禁止
質量濃度で3~7個の芳香環を持つMOAHが1ppmを超えるインキの使用を禁止

上記の表で、対象物質の欄にあるMOAH及びMOSHは物質の略称であり、この規制の中でそれぞれ

MOAH (Mineral Oil Aromatic Hydrocarbons)

1~7個の芳香環を含む鉱物油芳香族炭化水素

MOSH (Mineral Oil Saturated Hydrocarbons)

16~35個の炭素原子を含む鉱物油飽和炭化水素

のこととして定義されています。

対応

フランス鉱物油規制は、フランス国内において適用される規制です。フランスへ輸出される製品の製造及び流通に関わる企業は、この規制への対応が求められます。我々インキの販売店は、印刷会社様から製品に使用されているインキの品目を確認し、各インキについて、インキメーカーに対して規制対象物質に関する不使用証明書の作成を依頼することになります。

弊社で扱った事例を紹介しますと、某インキについてのインキメーカーからの含有調査報告書では、MOAHについては1%未満、MOSHについては原料メーカー非開示という回答でした。そのインキのラベルには、印刷インキ工業会の制定した植物油インキマークの表示がありました。植物油インキであることの条件は、植物油の含有量が基準値以上であることであって、鉱物油が含有されていないことではありません。我々が印刷会社様からお問い合わせをいただいた際には、この点を注意する必要があります。

最後に

フランス鉱物油規制は、フランス国内において適用される規制ですが、今後、EU全体への広がりが想定されます。また、日本国内においても同様の規制を実現するために、化学物質についての法規制が改正されることが想定されます。当同業会では、このような変化に対応するべく、定期的に研修会を実施し、印刷材料や業界知識の共有を図っております。この記事をご覧の印刷会社様がいらっしゃいましたら、ぜひ当同業会会員の販売店にご用命賜りますようお願い申し上げます。

参考サイト

【会員情報・問い合わせ先】
株式会社 エバタ
https://www.ebata-mon.co.jp/

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